アルゼンチンの5人組の1stAlbum。DTと同じメンバー構成で、DTのアルゼンチン公演の前座を勤めたりと、いかにもDT型のProgMetalを演っているかのような雰囲気を漂わせつつも、その実はDTよりも遥かにシンプルで解りやすい構成の音楽を奏でたりしている。というか、もはやProgMetalの範疇を外れて、ごく一般的なヘヴィロックといってもよい程度にまで方向性をノーマライズさせてしまっているかのようでもある。そこには、火花を散らすようなGとKeyによるテクニカルパートも、壮大なオーケストレーションも、およそProgMetalを連想させるような記号となるような要素は見当たらず、ただひたすら簡潔で解りやすい構造の、躍動するダイナミックな音楽性が展開されているのみである。そういった意味で言えば、「凝ったヘヴィロック」と言えなくもないのだが、例えばLINKIN PARKのようなミクスチャー系のヘヴィロックからみると、やはりProgMetalに見えざるを得ず、かといってゴリゴリのProgMetalからみれば彼らの音楽はまるでスリーコードのロックンロールのように思えてしまう。何とも不思議な線を狙ったものである。必要最小限のアンサンブルがダイナミックな躍動感を運んできてくれる。特にDsの歯切れの良さは特筆すべきで、そのシャープなスティック捌きの醸し出す躍動感が、楽曲全体に勢いを漲らせている。Gは意外とゴリゴリ系で、重量感溢れるリフをPowerMetal並みに繰り出してDsの勢いに加勢するのだが、意外と前面に出る場面は少なく、Gソロの時間も非常に短い。Keyもまた然りで、数少ない音色でアンサンブルを支える地味な存在でしかない。Voは清涼感のある声質でハッキリと唄い上げるタイプ。それぞれが自分の役割をわきまえて、出しゃばらずに構成要素に徹している感は否めず、つまり総体としてよく整理され纏まっているわけで、彼らの音楽にバランスの悪い冗長性を見出そうとしても、どだい無理な話となっている。
1曲目"Translation"はややアップテンポのHMなGリフで幕を開ける。あまりにも解りやすく、使い古された感のある当のGリフであるが、1曲目の景気付けにはもってこいの心地よさ。そのいかにもHMな歌メロを、いかにもなメタルVoではなく、少々音程が危なっかしいもののクセの無いストレートタイプのVoが朗々と唄っている。そのせいでVoはパワー不足に聴こえてしまうが、歌メロが微妙にキャッチーなため、つい聴いてしまう。Dsの音は決して重くはないものの、ツーバス連打や、いかにもHMなキメを織り交ぜながらをグイグイと牽引してゆく。エンデイングでは一旦のブレークの後、ひたすらGリフを刻み付けながらそのまま終了。2曲目"The Dream Prisoner"はThrashMetal風のGリフを軸に勢いよく進行。歌メロは薄く、1曲目ほどキャッチーではないが、とにかくGリフとDsの勢いで押し込んでゆく。途中でメロウな雰囲気になるVoパートを挟んで、間奏部分で初めてGソロが登場。ただしあっという間に終わってしまう。ひたすら直線的なGリフの勢いで突っ込んでゆき、メロウなVoパートでキャッチーなアクセントを織り込むといった構成。Dsの鮮やかな畳み掛けも印象的。3曲目"Stay"は核となるKeyフレーズにBが絡み、やがて相変わらず重いリフを刻み込むGと、スリリングに畳み掛けるDsが加わり、2分近いイントロは聴き応え充分。唄い出しの歌メロは抑え目で大したことはないが、サビの部分では歌メロがストレッチして、更にカッコいいDsのフィル等も手伝って最終的にはそれなりの高揚感に。しかしこのDsはカッコいいぞ。スリリングなフィルの畳み掛けに印象的なハイハットワーク。このDsを聴いているだけで楽しい。エンディングはGリフから、短いながらも珍しくGソロが存在感を見せつけて終了。4曲目"In Memory"はSEから入って、悲しげなピアノとGの旋律が響き渡った直後、Gリフが一閃、一気に前ノリのリズムで畳み掛けてゆく。唄い出しの歌メロはそれほどでもないが、次第に仄かな哀愁を湛えて歌メロが浮かび上がってくる。途中、スローダウンして冒頭の悲しげなパートが挿入されるが、直ぐにGリフによってダイナミックなVoパートに引き戻される。続くエンディングはGソロからKeyソロを挟んでGソロに。Gソロはいつになくボリュームたっぷりにピロピロと速弾きを披露。ほんの僅かなKeyソロはポップだった80年代のRick Wakeman風か。5曲目"Made As One"は軽快なリズムでGリフとロックな歌メロが交錯するキャッチーなHRチューン。ブリッジからサビにかけてが特にキャッチーで印象的。間奏部分は渋めのGソロとザクザクGリフの応酬がカッコよい。この曲などを聴くと、ProgMetalなんかよりもこういったキャッチーなHRを演っていた方がよいのでは、とさえ思えてしまう。なかなかよい曲だ。6曲目"Sacrum"はシンフォニックなKeyフレーズから突っかかるようなDsが加わって、keyが主導するイントロがスタート。畳み掛けるような速射Gリフとデスヴォイスによる「剛」なパートと、アコースティックでクラシカルな「柔」のパートが混在する構成。間奏部分は哀愁のGフレーズである。エンディングはピアノをひっそりと響かせて終了。7曲目"Innerself"は繊細なDsとGリフによるイントロの後、抑え気味のVoを伴って淡々と進行してゆく。歌メロが薄く、ハッキリ言ってつまらないのだが、エンディングのGとKeyによる地味なソロパートはまずまず。アルバムのタイトルトラックである8曲目"Cognition"は、冒頭の穏やかな展開から一転、印象的なサビのKeyフレーズに導かれるようにイントロが展開してゆく。厳しいGリフを伴って、Voが空間に響き渡ってゆく。サビのメロディーは単純であるが極めて印象的で、頭の中で廻るまわる。いつになく聴き栄えのするGソロとKeyソロを中心とした長い間奏部分には、ゆったりと泣きを放散するGソロも完備。緩急のメリハリもあってなかなか充実した内容の曲ではないか。9曲目"No Turning Back"は5曲目"Made As One"をスローバラード化したもの。
3曲目のDsは何度聴いても素晴らしいし、キャッチーな5曲目も捨て難い。しかしProgMetalBandとして彼らを眺めたとき、8曲目の存在は何物にも代え難い輝きを放っている。アルバムを通して聴くと、彼らの曲は間奏部分の後にサビが繰り返されて終わるのではなく、間奏部分がそのままエンディングになって終了してしまうのが判る。そのせいか、インスト部分が少ないにもかかわらず、イマイチ「歌モノ」という感がしないのもまた事実である。
(2007)
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